ページの先頭です


ここからヘッダーです



ここから本文です

INTERVIEW

利用企業の声

AIが常識・熟練技術・感情までも理解!「挑戦の先」へ

Luminoso Technologies

ルミノソジャパン日本法人代表

デビッド・スミス

文:上阪 徹  /  編集:丸山香奈枝

グローバルに活躍する方々がどんな価値観を持ち、働く場所や人に何を求めているのか、良い仕事をする要素について、今、勢いのある海外成長企業・国内先端ベンチャー企業にスポットをあてたインタビュー。今回ご登場いただくのは、AI分析を駆使した自然言語理解のリーディングカンパニーLuminoso Technologies

自然言語理解の中でも文脈を理解するという先端テクノロジーを駆使する同社のビジネスについて、ルミノソジャパン合同会社の日本法人代表、デビッド・スミス氏にお話を伺った。

社会の常識をあらかじめプロミング

例えば、数万件にもおよぶ顧客からのリクエストを、言語のニュアンスを汲んでコンピュータが理解する。 さまざまな業界のトレンド・トピックや継続的な問題に関するデータの収集、照合、報告には通常、数週間の時間を要するが、それが数時間で洗い出せてしまう。ここから顧客は、有用な知見を生み出せる。 こんなことを可能にするテクノロジーを提供している会社がGLOBAL BUSINESS HUB TOKYOに入居している。

アメリカのマサチューセッツ州に本拠を持つLuminoso Technologiesだ。日本法人となるルミノソジャパンの代表社員、デビッ・スミス氏はこう語る。 「人が語っている会話のデータについて、洞察につながるようなテクノロジーを提供しているのが、ルミノソという会社なんです」

プレスリリースには、AIを使用したデータ・インサイトを提供する自然言語理解のリーディングカンパニー、とある。だが、ディープラーニングのような今の最先端AIの仕組みではない。

「今のAIは、パターンをコンピュータに理解してもらっているんですね。いわゆる深層学習です。しかし、ルミノソがやっているのは、言ってみれば社会の常識をあらかじめプロミングしていくんです。だから、特定の言葉に対して洞察ができる。まわりの文脈を人間のように理解しているので、推論ができる。そういうエンジンになっているんです」 このアプローチを、転移学習と呼ぶのだという。 「かなりマニアックなアプローチですね。同じようなAIを持っている会社に、私はこれまで会ったことがありません」

クレームやリコールの事前予測を可能にする自然言語理解ソフトウェア

Luminoso Technologiesは1999年、MITメディアラボから始まった。 「なんとも尖ったエンジニアがいまして、PCに言語を教えようというプロジェクトを始めたんです」 実に11年間にわたって、ずっと研究開発を続けていた。そして2010年、スピンアウトして生まれたのが、Luminoso Technologiesだ。 「スタートアップで10年も研究開発をやっていた会社というのは、まずないと思います。この間に、15の言語をコンピュータに教え込みました。日本語は、日本の大企業や大学などとも協力して精度を高めていますが、大きな特徴は文脈がわかることです」

日本語のみならず、日本の世の中、常識についてコンピュータがわかるという。これが、文脈がわかっている、の意味である。 「例えば、こんなユースケースがあります。お客さまの声と、従業員の声をペアリングするんです。ボイスオブカスタマー、ボイスオブエンプロイーですね」 ボイスオブエンプロイーでわかりやすいのは、社員が残している技術情報だ。どんな会社でも、社員はさまざまなレポートや文書を残している。それをインプットするのだ。 「一方で、ボイスオブカスタマーで、使っている機器が壊れたという話が入ってくるとします。それを店舗に持ってきてもらい、どう壊れたのかを説明してもらうと、また文書として残ります」

これを、ボイスオブエンプロイーの技術情報と照らし合わせる。そうすると、未知の現象か、既知の現象かがわかる。 「これが、AIを使った洞察という意味です。結果として、例えば高い確率で未知の新しい問題だ、ということがわかったりする。そうすれば、クレームやリコールの前兆として捉えて対処ができるようになります」

「世の中の常識」「企業文化」をも理解するテクノロジー

海外では、顧客は製薬企業やゲーム企業などが多いというが、日本では製造業から興味を持たれることも多いのだそうだ。これは、欧米ではあまりないという。 「ひとつのトレンドは、技術伝承の問題です。過去に熟練工が残した膨大なインテリジェンスが、テキスト情報で残っている会社は少なくありません。ところが、定年などで現場を離れてしまうと、文書の情報が利活用できていない現実があるんです」 そこで、ルミノソの自然言語テクノロジーを活用する。膨大なテキストデータを、コンピュータに入力していくのだ。 「社内の独自用語も、ルミノソは理解します。読み込んで、曖昧検索もできるエンジンを提供すれば、例えば若手のエンジニアが何かの問題を抱えたとき、その現象を入力するだけで、原因につながる検索結果が出やすくなります。過去の文書から、対策が見つかる可能性が高まるんです」

世の中の常識を理解したように、企業の常識、個別の言葉も理解できるのが、ルミノソのシステム。眠っていた膨大な過去の技術情報が活かせるということだ。こうしたソリューションは、個別企業ごとに一緒に課題を考えながら作っていくという。そしてポイントは、AIがすべてを分析するわけではないことだ。

「分析するのは、あくまで人間なんです。AIですべて解決するという期待がメディアで上がってきたりしていますが、私たちのより現実的なアプローチとしては、分析は人間がするのがベストである、ということです」 ただ、そのための有効なツールになりうる、ということだ。だから、日本を代表するような企業が、次々と取引先に名を連ねているのだ。

決め手は「大手町」で働いている人たちからの「良いオーラ」

2017年、ルミノソジャパンに加わったスミス氏は、ユニークな経歴を持っている。アリゾナ大学で日本語を学び、いきなり東京で投資銀行に就職したのだ。 「2008年のことでした。私はアメリカ生まれですが、一度もアメリカで働いたことがないんです。投資銀行の日本支店では、日本人の上司のもとで、顧客からの電話を受けるところから仕事が始まりました。日本語は大学で学んでいただけ。最初は本当に大変でした」

その後、GREEで金融系のプロジェクトに携わり、デジタルガレージでベンチャー企業投資を担当。さらに、日本で起業も経験している。 「ちょうど日本の自動車メーカーがルミノソに興味を持っていたんですが、日本には当時、スタッフがいませんでした。それで、日本のお客さまとアメリカ本社の間に立ってほしい、とジョインすることになったんです」

当初は、翻訳調整が中心の仕事になるかと思いきや、技術もしっかり理解してコミュニケーションをする必要があることに気づいた。その後は、まったく経験のなかったセールスも担当することになった。日本のスタッフは今、4名体制。 「日本のお客さまは、みなさん本当に優秀です。いろいろなお話をお聞きすることができますから、それをひたすら聞いて、アメリカ本社に伝えることも重要な役割になっています。そこから、新しいプロダクトを作る仕事につながる場合もあるんです」

GLOBAL BUSINESS HUB TOKYOへの入居は201810月。ルミノソジャパンの本格稼働にあたり、スタッフを雇うことになり、オフィスが必要になった。 「GLOBAL BUSINESS HUB TOKYOは、アメリカと日本を行き来している友人に紹介されました。まず何より気に入ったのは、大手町という場所です」 当時は、愛知県の顧客のもとに週一度、新幹線を使って行く必要があったため、東京駅に近いことはとても重要だったという。 「お客さまに東京に来ていただくこともありますが、アクセスが本当に便利なんです」 そして内見に来て、まわりを見渡して、一目で気に入ることになった。

「案内してくださった方を含めて、とても好印象だったからです。そしてオフィスですでに働いている人たちから、とてもいいオーラを感じました。初めて来たときに、ぜひここで、と思いましたね」 エントランスにある、ずらりと並んだ会社名のプレートを気に入ったのも覚えている。 「そこにある企業名を見て、すぐに安心しました。今とても有名になっている会社もあって、ルミノソもそうなれたら、という気持ちでいますね」

人生には矛盾が多いもの

個人やチームのパフォーマンスを上げる上で、リモートワークになってから、気づいたことがあったという。 「それまでは、自分ですぐ近くにある皇居を散歩したり、走ったり、ビルの中にあるスパでサウナに入ったりして気分転換をしていましたが、最高の気分転換は実は人との雑談だったことに気がついたんです」 リモートワークになって、フェイストゥフェイスでのコミュニケーションが減った。これが実は大きなストレスになっていった。 「だから、今はみんなと積極的に雑談するようにしています。ニュースやスポーツについてちょっとした話をするだけで、いかに気分転換になるか。リモートでも、ワンオンワンミーティングをしたり、電話をしてみたりしていますね。それが元気をくれる」

個人として心がけているのは、臨機応変でいることだ。信念は持つけれど、信念に縛られすぎない。新しい情報があれば受け止め、新しい信念へとアップデートしていく。 「矛盾していますが、人生は矛盾が多いものなんです(笑)」 そしてもうひとつが、難しいと思うことをこそ、やってみることだ。 「3年後、5年後には、やってよかったと必ず思うからです。なせなら、必然的に、知らないうちに成長しているからです」 大学を卒業してすぐに日本に仕事をしようと考えたこともそうだった。 「別の言語の知らないところに行けば、5年後にはやってよかったときっと思うと考えたんです。とんでもない挑戦だったわけですから。でも実際、やってよかったと思っています」

2020年7月28日、Luminoso社は非構造テキストデータ中文書の高度な感情分析が可能なディープラーニングモデルを発表した。 進化し続ける環境で5年後には思いも寄らない成長をスミス氏にもたらしているに違いない。

撮影:刑部友康

ここまでが本文です


pageTop