INTERVIEW

利用企業の声

2次元図面が瞬時に3次元に。世界が驚く技術で、室内空間をより豊かに彩る

URBANBASE株式会社

代表取締役 CEO

大野将弘

取材・編集 : 佐藤 瑞恵

グローバルに活躍する方々がどんな価値観を持ち、働く場所や人に何を求めているのか、今、勢いのある海外成長企業・国内先端ベンチャー企業にスポットをあてたインタビュー。

今回は、インテリア・不動産業界向けに独自の特許技術を用いたVR/AR/AIソリューションを提供するURBANBASE株式会社 代表取締役CEOの大野将弘氏にご登場いただき、その卓越的な技術で目指す世界観などについて伺った。

2D図面画像を自動で3D空間に変換する、唯一無二の技術

インテリアや不動産領域でのAR、VR技術の普及、通信・映像技術の革新を背景としたメタバース市場の急成長などにより、空間データの重要性が増している。しかし、空間データを迅速にデータベース化することは簡単ではない。多くの場合、図面は平面図であり、それを立体化するには3D CADなど特殊なソフトを操作するスキルが必要だからだ。そんな中で、2D図面画像を瞬時に自動で3D空間に変換する独自の技術「AutoSketch」を展開するのが、2014年に韓国で創業したURBANBASEだ。その日本法人が、現在Global Business Hub Tokyoに入居している。

「『AutoSketch』は、あらかじめ学習した図面情報をもとに、独自のAI機械学習アルゴリズムを利用して3D立体図面化を実現するものです。世界を見渡しても、このような技術は他にはなく、まさに唯一無二です」と語るのは、日本法人の代表である大野将弘氏。「世界中の室内空間情報を全てプラットフォーム内に登録し、無料で利用できるようにする」をビジョンとして掲げ、インテリア・不動産業界を中心に事業を拡大させている。

韓国国内では、既に85%以上の住宅図面をデータベース化している。「AutoSketch」は韓国、日本、米国、EU、中国ですでに特許を得ており、他の国々でも特許申請中だという。日本法人は国内市場の拡大、そしてグローバル展開の拠点として重要な役割を担っている。

「現在の日本で物件の検索をすると、部屋の図面は2Dで表示されることがほとんどです。それがすべて3Dで表示されるようになれば、できることは広がります。私たちは、これまでの常識を覆す技術やサービスを世の中に提供していきたいのです」

住居、オフィス、店舗、イベントスペース――室内空間を自在に操る

現在のURBANBASEを代表するサービスが、2021年1月にリリースしたSaaS型インテリア3Dシミュレーションサービス「Urbanbase Studio」だ。直感的な操作性で簡単に3D図面を作図でき、完成した3D空間上に家具やインテリア雑貨などを配置できる。さらには、その空間をウォークスルーすることも可能だ。「Urbanbase Studio」は、GBHTでも導入が始まっている。

「パノラマVR」

「インテリアショップやハウスメーカーのような住空間をコーディネートする企業はもちろん、オフィス賃貸の不動産企業にも提供を始めています。今後は、店舗内装やイベントスペースなど、活用範囲を広げていきたいと考えています」

2021年3月には、「AutoSketch」技術を利用して間取り図を3D変換する「図面3D変換サービス」の販売を開始した。さらに同年6月には、空間分析技術「Space AI」とAR技術をマッシュアップしたARモバイルアプリ「Urbanbase AR」の提供をスタート。部屋などのAI空間分析から、家具・家電など商品リコメンド、AR表示によるシミュレーション、ECサイトへの遷移がひとつのアプリで完結する。家具・家電メーカーや販売店などの販促ツールとして無料で提供しているという。

「インテリアの空間シミュレーション、不動産の新築物件図面の3D化など、各サービスでのプレーヤーは、国内にも多数存在します。しかし、これらを網羅し3D空間データプラットフォームとして提供できる企業は、URBANBASEの他にはありません。これが私たちの競合優位性です」

BtoCサービスの提供により、事業を一歩先へ

これまでBtoBでサービス提供してきたURBANBASEだが、2022年には「Urbanbase Studio」を機能拡張し、BtoCサービスとして無料での提供を予定している。

「まずは東京からですが、ご自宅の間取りを地図から呼び出し3D化することで新しい家具、壁紙、床材などをコーディネーションしていただけます。現在お住まいの部屋だけではなく、転居予定の部屋に現在の家具や家電などが配置できるのかなどシミュレーションもできます」

このサービスを提供することにより、実際に人が生活を営む住空間のデータを蓄積することができる。どのようなレイアウトにしているのか、どのような色・形の家具を好むのか、傾向がつかめることはURBANBASEの事業の可能性をさらに広げるものとなるだろう。

「人々がどのような空間で暮らしているのか、そのデータを蓄積・分析し、家具・家電メーカーさんに提供することで、プロダクト開発に役立てていただけるのではないか。まだアイデアベースですが、事業展開の可能性を一つひとつ確認しながら進めているところです」

BtoCサービスの開始によって、「世界中の室内空間情報を全てプラットフォーム内に登録し、無料で利用できるようにする」という、URBANBASEが目指す世界の実現が、さらに近付くだろう。

世界に類を見ない技術に惚れ込み、40代での起業を決意

IT領域での経験が長く、GMO、ソフトバンクといった業界を代表する企業での勤務経験がある大野氏。外資系企業でシリコンバレー、シンガポール、オーストラリアと海外経験も豊富だ。韓国発のURBANBASEとの出会いは、ソフトバンクでAlibabaグループとの合弁会社立上げの一環で、海外スタートアップの支援を行っていた時だった。

「2Dの図面が瞬時に3Dになる技術を目の当たりにして、これは世界を変えると確信しました。優れたスタートアップを数多く見てきましたが、URBANBASEの革新性は飛び抜けていましたね。技術もさることながらメンバーとの相性も良く、この人たちと一緒にぜひグローバル展開を成し遂げたいと思い、日本法人CEOを志願しました。40代後半でスタートアップに飛び込むことに周囲からは色々と言われましたが、迷いは一切ありませんでした」

URBANBASEに惚れ込んだ大野氏は、スタートアップを支援する立場から、当事者となった。しかし日本法人立ち上げにあたっては後悔の連続だったという。

「まずは言葉の壁です。日本法人立ち上げのためにジョインしてくれた韓国人が通訳もしてくれましたが、誰かに頼らないと言いたいことが伝わらない状況は、思った以上にストレスが大きかったですね。日本と韓国とは開発プロセスも違うため、お互いに同じ話をしているつもりでも、実は内容がまったく異なっていたということもありました」

加えて、知識の壁もあった。大野氏はIT領域の知見は豊富にあるものの、URBANBASEがビジネスの主戦場とするインテリア・不動産業界についてはゼロベースからのスタートだ。一つひとつ専門用語を身に付けたり、自分で不動産を所有したりして、知識を蓄えていった。

GBHTという強力な足場で、ビジョンの実現に勝負をかける

産みの苦しみの中でもURBANBASEの描く世界観を信じて歩みを進めていった大野氏。ひとつの転機となったのが、三菱地所とのプロジェクトだった。日本法人立ち上げの際に支援を受けていたジェトロから紹介があったのだという。

「当時はまだ具体的なサービスもなかったのですが、私たちの強みである技術に期待していただき、共創につながりました。とにかく夢中で食らいついて開発を進め、なんとか納品につなげたことが、大きな自信になりました。そして、ここで開発したシミュレーションの仕組みをベースとして生まれたのが、『Urbanbase Studio』です」

このプロジェクトの縁からGBHTへの入居も決めたというが、そのメリットは想像以上に大きかった。スタートアップにとって、プロジェクト実績もさることながら、オフィスの場所も信用につながる重要なポイントだ。

「また、GBHTは制度が柔軟です。当社はデスク1つの契約ですが、社員であれば自由に出入りでき、ミーティングスペースなどを利用できるため助かっています。そして入居企業同士の交流会も、ビジネスにつながる可能性がありますから、スタートアップにとっては大変ありがたいですね。先日はカントリーマネージャーの交流会で、有意義な時間を過ごしました」

現在は社員数も順調に増え、BtoCサービスのリリースもひかえるURBANBASE。この1年を飛躍の年にしたいと、大野氏は意気込む。

「引っ越しをしたい、間取りを変えたいと思ったら、まずURBANBASEのサービスを利用するという状態をつくるために、BtoCサービスで一般ユーザーを増やしていきたいですね。また、ゆくゆくはインテリアコーディネーションのお手伝いをするサービスも立ち上げたいと思っています。家具メーカーやインテリアコーディネーターなどとつなげることで、使って楽しいサービスに高めていきたいですね」

住居からオフィス、そしてイベントスペースへと事業を展開して室内空間データを網羅しながら、空間に関わる様々なプレーヤーや一般ユーザーとのネットワークも広げていく。目指す世界観のために、リスクを恐れず突き進む大野氏は、人々がより空間を楽しむ豊かな未来を見据えている。

撮影 : 加藤 タケトシ


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