“VR内見”で不動産にイノベーション ナーブ多田氏が語る 大手町発 “大人スタートアップ”の可能性

ナーブ株式会社

代表取締役多田 英起 氏

「VR元年」と呼ばれるほどVR業界に注目が集まった2016年。昨年度の国内市場規模は82億円、さらに5年後には1700億円に拡大するとも言われている。そんな成長分野において、“黎明期”から着々と新たな地平を切り開いているのがナーブ株式会社だ。

ゲームや映像コンテンツなどエンタメ系サービスを提供する企業が目立つVR業界において、同社が展開するのは、人々の暮らしを直接的に豊かにする「ライフスタイルVR」。とりわけ力を入れているのが、不動産の内見などにフォーカスした「VR内見」だという。

VR内見とは、ゴーグル型VR端末を利用して不動産物件などの内見が出来る画期的なシステム。より多くの物件をユーザーに体感してもらうことで、成約率と集客力をアップするのが狙いだ。

ナーブ株式会社 代表取締役の多田 英起さんは次のように語る。

「“インフォメーションから感覚へ”というのが僕らのテーマ。例えば38平米でスクエアな部屋と45平米で縦長の部屋だと、実は前者の方が広く感じられます。しかし借りる側は数字上の面積を重視しがちなので、実際に物件に足を運んでみて、初めてミスマッチを知るわけです。わざわざ現地に行ったのにもかかわらず成約に至らなければ、物件を探している側にとっても、不動産会社にとっても無駄にほかならない。ところが『VR内見』であれば、わざわざ現地まで足を運ぶことなく、その場で物件を“実感”出来るので、より多くの物件の内見が可能になる。結果、ベストなマッチングを提供することができるというわけです」(多田さん)

7月1日、ナーブはVR内見を利用出来る超小型無人店舗「どこでもストア」のサービスを開始。
これは、ショッピングモールなどに一坪程度の無人店舗を構え、そこにいろいろなお店が出店、VR端末などを活用して様々なサービスを提供するというものだ。

たとえば不動産業者が出店したとすれば、人が集まる場所で物件を“体感”させたり、物件の説明をすることが可能となる。また旅行業者の場合、旅行のプランや旅先のホテル、観光地などをVR端末での体験をもとにセールスすることができるというわけだ。

「『どこでもストア』はショッピングモールや駅ナカなど、不特定多数のユーザーが足を運ぶ場所に出店できることを可能にします。つまりたった一坪の価値が、VRにより無限に広がるのです」(多田さん)

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そんなナーブ株式会社が、GBHTに入居したのは、短期間で成長を続けている自社にマッチしていると感じたからなのだとか。

「うちは毎年成長していて、人もどんどん増えていく中、不動産賃貸は2~3年契約が当たり前。10人しかいない会社に、240坪の物件を紹介されます(笑)。そこで、三菱地所さんに相談したところ、こちらを紹介いただきました。中規模のインキュベーションオフィスは中々ないので、本当に助かりましたよ」(多田さん)

さらに多田さんはGBHTの魅力について次のように続ける。

「ここに入居している企業は、力のある会社ばかりです。いい意味での緊張感がありますよね。“負けていられない”と思える」(多田さん)

そんなナーブ株式会社だが、実は既にGBHTを卒業して、同じ大手町にある「FINOLAB」(大手町ビル4階)のサービスオフィスに拡張移転し、新たなオフィスを構えている。そしてその目は世界を見据えている。

「日本の企業で経験や実力をため込んだ40代の人が、今後はばんばん起業すればシリコンバレーにだって追いつけるかもしれない。日本の企業で揉まれまくった人は、結構力のある人が多いですからね。でも、みんな勝負をしない。要因のひとつは成功事例の少なさだと思います。もし40歳からのスタートアップの成功事例がたくさんあれば、一気に環境が変わってくるでしょうね。だから僕は、その先駆けというか、“大人スタートアップ”のパイオニアになってみたい。そして、大手町を、“大人スタートアップ”の聖地にしたいですね」(多田さん)

補足情報

ナーブ株式会社

代表取締役多田 英起 氏

PROFILE

多田 英起 氏

1979年生まれ。在米生活を経て、株式会社エーピーコミュニケーションズに入社。「技術を活用した新しいソリューション」をテーマに、 KDDI社との共同特許事業、米ミランティス社とのJV構築に携わる。2015年ライフスタイルに特化したVR事業をスピンアウトして、ナーブ株式会社を創業。

ナーブ株式会社

「人々のライフスタイルを変⾰するサービスの実現」を⽬的に 2015年10⽉に創業。2013年から VRの開発に着手し、不動産事業・観光事業・ブライダル事業・教育事業など、様々な事業分野で利⽤可能な企業向けVRコンテンツ配信プラットフォーム「ナーブ・クラウド」を開発。また、ビジネス利用に特化し、操作性や衛生面などの様々な課題をクリアしたVR端末「CREWL(クルール)」を自社開発。

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